12_31title
12_31
 今日は大みそか、泣いても笑っても今日が一年の終わり。
 年の始めに「今年こそ、もう待っているだけの人生はやめよう」と誓った。

 その願いはかなっただろうか?
 バケットを焼きながら考えた。

 雨の日も風の日もパンを焼いたし、たくさんの人たちと出会い、友達もできた。
 お店を持つことが夢のゴールだと思ったこともあったけど、この一年を通して、お店を続けていくことの大変さを学んだ。

 だけど、一つだけはっきりとわかったことがある。
 それはパンが大好きだということ。

「焼きたてのバケットをくださいな」
「夢の穂ベーカリーのバケットが大好きなんです」
 今日もパンを愛する人たちがお店にやってきてくれる。

 今日で一年は終わるけれど、日々は続く。
 大晦日は一つの区切り。明日に向かって人生は続く。

「来年もよろしくお願いします」
 と、言いながらバケットを渡すとき、何とも言えない幸せを感じる。

 悩んだり、さびしいときはパン屋に来てほしい。
 パン屋の店先は、いつも温かくていい匂い。
 パンを食べれば、きっと心に灯がともる。落ち込んでいた心が少しでも上を向くはず。

 パンは人生の傍らにいつもいてくれる優しい友達。
Komugi

12_30title
12_30
 毎月、0のつく日は円の力に敬意を表して丸いパンをどっさり焼く。

 完全無欠の円の形は永遠無限のシンボル。
 もっとも完璧にして安定した形。
 なめらかで角目のない円は平和の象徴。

 今年も残り1日。
 世界が平和であるようにという願いをこめ、オリーブの丸いパンを作る。

 国連の旗の図案として使われているオリーブは平和の象徴。そして、やせた土地にも豊かな実りをもたらす繁栄のシンボルでもある。

 ソフトなフランス生地にオリーブのペーストを入れ、一生懸命、練ったら隠し味にアンチョビをプラスする。

 ワインや料理に合うパンは、暮れの食卓に加えてほしい大人の一品。

 仲間や家族と食卓を囲み、楽しいひと時を楽しめるのも平和であるからこそ。

 世界にはまだまだ紛争地域が多い。
 あわただしい暮れだけれど、オリーブのパンを噛みしめながら平和について思いをはせた。
Komugi_3

12_29title
12_29
 暮れのワスレナグサ商店街は大忙し。
 夢の穂ベーカリーにもお正月用のパンを買いに来る人が多くなった。

 一番の人気はやっぱり角食パン。
 角食パンは日本人にとって、一番親しみのあるパンなのかもしれない。
 声高に自己主張するわけではないけれど、ジャムにもバターにも蜂蜜にもよく合う。
 卵やハムと食べてもおいしい。固くなってしまったらフレンチ・トーストにすることもできる。

 角食パンは一見、平凡。だけど、応用自在。
 定番になるには、それだけの力強さとつきない魅力がある。

 自分のことをずっと平凡で小さいと思ってきた。
 でも、パンを焼くうちに少しずつ考えが変わった。

 声高にアピールするものはないけれど、それでいい。
 みんなに生きるエネルギーを与える力強いパンを地道にコツコツと毎日、毎日、焼いていきたい。

 角食パンを焼いていると、それが私の生き方なんだと思える。
Komugi_2

12_28title
12_28
「明日から休みなんです。今年最後のランチを買いに来ました。今日のおすすめは何ですか」
 近所の会社に勤めるケヤキさんがやって来た。

 営業で忙しいケヤキさんにはパワフルなローストビーフのクロワッサン・サンドがおすすめ。

 カフェのチズさんの焼いたローストビーフにサニーレタスとアスパラをはさみ、辛いホースラディッシュを添えたごちそうパン。

「今年も一年、お世話になりました。夢の穂ベーカリーのパンにはいつも励まされました。来年もよろしく」
 ケヤキさんが照れ臭そうに微笑んだ。

 私のパンが励みになっていたなんて、なんて素敵なんだろう!
 その言葉が、何よりも私の励みとなる。
「こちらこそ、今年も一年、ありがとうございました」

 豊かな味わいのクロワッサン・サンドは励ましの言葉の花束。
 リッチなクロワッサン生地は人生を肯定する味。
 栄養満点なお肉はためになる貴重なアドバイス。
 そして、ピリリとしたホースラディッシュは辛いお小言の味かも・・・。

 いろいろなおいしさが一体となったリッチな、リッチなクロワッサン・サンドを食べて、一年間がんばった自分を励ましてあげよう!
Komugi

12_27title
12_27
 暮れも押しつまって来たせいか、道行く人たちの足取りがはやい。
「年賀状も書かなくちゃ、大掃除もしなくちゃ、お正月の仕度もある」などと考えながら歩いていると、どうしても早足になってしまう。

 毎日、同じ日の重なりなのに、暮れというだけであわただしい。

 こんな時だからこそ、時間のかかるパンが焼いてみたくなった。
 それはヨーグルトライ。
 ヨーグルト菌を種にしてサワー種とともに発酵させる。
 ヨーグルト種は作るのに時間がかかるけど、このパンを作っていると、なぜか心が落ち着く。

 時間をかけて作ったパンを切ると、何ともさわやかな香りが立ち上り、「作ってよかった」と充実感がわいてくる。

 心に余裕がないと感じたらぜひ、このパンを食べてほしい。

 どっしりとしたパンの皮はしっかり、そして、中身はしっとり。

 一口味わえば、暮れのひと時をゆったり、そしてさわやかに過ごすことができる。
Komugi_2

12_26title
12_26
 クリスマスセールでずっと忙しかった私たち。
 気を張り詰めていたせいか、なんだかホッとする。
 でも、気がゆるむと風邪をひいたり、体調をくずしてしまいがち。

 気を引き締めて暮れに向かうために、ジンジャーブレッドを焼いた。

 ジンジャーブレッドはイギリスなどで、朝食やティータイムなどに楽しまれるスパイシーなパン。
 パウンド生地に生姜のしぼり汁やパウダーをたっぷりと入れ、お砂糖の代わりに茶色の糖蜜を使って焼き上げる。
 こげ茶色をした素朴なジンジャーブレッドは日持ちがよく、何日もおいしく楽しめる。

 生姜は冷えに弱い女の子の心強い味方。
 ワスレナグサ商店街には生姜のファンが多いので、ジンジャーブレッドもすぐに売り切れてしまった。

 冬至は過ぎたけれど、寒さはこれからが本番。
 心と体の引き締まるジンジャーブレッドを食べて、キレのいい心と体を作ろう。
Komugi

12_25title
12_25
 忙しいクリスマス・セールもいよいよ今日まで。
 明日からは年末セールが始まる。

 お店をやっていると、年がら年中、仕事に追われる。
 だけど、それはすごく楽しくて幸せなことでもある。

 クリスマスの朝、「今日もがんばろう」と起きた時、とびきりのおいしいものを自分に食べさせてあげようと決めていた。

 それはラベンダーの風味の上質なベルギーチョコレートを秘めたパン・オ・ショコラ。

 芳醇なバターをたっぷりのデニッシュ生地はサクサクと繊細。一口食べると、デニッシュとチョコレートの織り成す最高の味を楽しむことができる。そして、ラベンダーのすっきり感・・・。

 何も言葉はいらない。
 満ち足りた静かな幸せ感。
 それがクリスマスの朝を特別なものにしてくれる。
Komugi_8

12_24title
12_24
 気がつけばクリスマス・イヴ。
 今夜はチズさんのカフェを手伝うことになっている。
 だから、とても忙しいクリスマス・イヴになりそう。

 何日も前から考えたクリスマスの特別メニューは小ぶりに丸く焼いた田舎パンの中に熱々シチューを詰めたもの。

 田舎パンは小麦粉にライ麦を加えてじっくり焼いたとてもヘルシーなパン。
 飾り気はないけれど、歯ごたえのある皮と少し酸味のある味が特徴。

 いつもはテーブルの脇役だけど、今夜は頼りがいのあるこのパンが主役。

 田舎パンのてっぺんを蓋のような形に平たく切り落として中身をくりぬいたら、そこにチズさんお手製のチーズたっぷりのホワイトシチューをたっぷりと盛り付ける。切り落としたパンで蓋をし、ヒイラギをあしらったら出来上がり。

 テーブルに運ぶと「わあ、何かしら?」とみんなの歓声が上がる。

 おいしいシチューとパンを同時に味わってもらえる、これぞチズさんと私の究極のコラボ・メニュー。

 みんなに楽しんで食べてもらえるってすごく嬉しい。

 聖夜のホットなシチューパン。
 最高のクリスマス・イヴを運んできてくれる。
Komugi_7

12_23title
12_23
 冬はまだまだ続くけれど、冬至が過ぎると、昼の時間が少しずつ長くなる。

 街路樹を見上げると、かじかんだような枝の先には小さな芽がついている。
 植物たちは冬の寒さを耐え忍び、芽吹きの春を静かに待っている。

 暗い季節の後には必ず明るい季節がやってくる。
 春は必ずめぐってくるのだ。

 どんなに寒い日でもマフィンをつくっていると楽しい気持ちになれる。

 マフィンはお日様にむかってにっこり笑う花の形。
 光に向かって伸び行く成長の形。

 優しいマフィン生地にオレンジピールを生地にたっぷり入れ、仕上げにパイナップルの輪切りを飾ったオレンジと黄色のかわいい春色マフィン。

 食べると心の中に希望が生まれる春色マフィン。
Komugi_6

12_22title
12_22
 リンゴを食べれば医者いらず。
 風邪のはやるこの季節、お店にはいつもリンゴのパンを並べる。

 今日のリンゴのパンはキャラメリゼしたリンゴをデニッシュ生地にのせて焼いたタルト・タタン風パン。

 タルト・タタンは昔、フランスでホテルを経営していたタタン姉妹がリンゴのタルトを逆さまにして焼いてしまったのが始まりだとか。
 失敗だと思っていたら、おいしくて評判となり、以来、世界中で焼かれている。

 キャラメリゼされたリンゴはほろ苦くて甘酸っぱい。
 それはまるで人生のような味わい。

 失敗を恐れずに懸命に生きれば、きっとチャンスに変わる。

 タルト・タタンは失敗をチャンスに変える強運をもたらしてくれる。
Komugi_5

«12月21日 病を寄せつけないかぼちゃのホカッチャ …寒さに負けない体力を養う…